まよいねこ

好きなものは多い方がいい。

きらきらの朝

いつもと同じ時間に起きて

いつもと同じ時間に家を出て

いつもと同じ時間の電車に乗って

だけど、行き先は特別な場所。

 

なにもかもが特別に見える朝。

 

だいすきなひとの元へ連れていってくれる切符を握りしめ

きらきら輝く朝日を浴びながらまだ眠そうな街をすり抜ける。

 

はやく、はやく、あいたい。

髪型を変える、生活を変える。

2ヶ月ぶりの美容院。

胸下までのロングヘアをセミロングまで短くして、パーマをかけ直してトリートメント。

施術終わり、美容師さんが映してくれた鏡の中のわたしは、数時間前より少しはかわいくなった、気がした。

 

髪を綺麗にしてもらうと身だしなみもちゃんとしなきゃという気になる、単純なわたし。

化粧水をいつもよりしっかりつけたり、ヘアオイルをきちんと馴染ませたり。

指先まで丁寧にハンドクリームを塗りこんで、フットマッサージを入念に行い、明日はボディスクラブしようなんて。

髪型をひとつ変えただけで、ふだんの生活も背筋を伸ばそうと思えるから不思議ね。

 

このかわいい髪型に似合うようなわたしになりたい。

素直になりたい

「今日ご機嫌だね?どうしたの?」

きょとんとした声が、電話口から。

連絡がほしいと思ったときに、スマートフォンの画面にあなたの名前が表示されたからよ、なんて、恥ずかしくて言えなくて。

いつもこんなだよ、なんてとぼけてしまう。

 

ああ、もっと素直になりたい。
もっとかわいらしくなりたい。

 

「次会ったとき、ぎゅーってして、ね」

 

これが、わたしのせいいっぱい。

ことばよりも素直な体温で、伝えさせて。

まほうつかい

ちいさな男の子が

おくちをぽかんとあけて言った

「魔法みたい」

 

そのことばが、社会人2年目だったわたしに突き刺さった。

目の前に必死で忘れていたけれど、わたしの作るものはお客さんのその先の、こんなちいさな男の子にもきちんと届いているのだと。

あの男の子のきらきらした瞳の中には、魔法が見えているのだと。

 

仕事で挫けそうになると、いつもあの男の子を思い出す。

わたしのこの手はこの足はこの頭は、魔法を作り出すことができるのよ。

そう思うと、なんだってできる気がする。

 

わたしはまだ見ぬ誰かにとって、まほうつかいなのだから。

ペットボトルの光

はじめて彼の部屋で目を覚ました早朝。

ベッドからするりと抜けだして、ひやっとする床に足をつけ、ぺたりぺたりと部屋を歩く。

ん、と彼のくぐもった声にくるりと振り向いたら。

床に置かれたペットボトルの水にカーテンからこぼれた光が反射してきらりと光り、わたしの足先にとんできた。

その瞬間、その光が泣きたくなるくらい美しくて愛しくて。

わたしはこの景色を一生忘れないと思った。

しあわせってたぶん、こんな景色なんだと思う。

 

ペットボトルの水がきらきらと光るのを見るたび、そんな景色を思い出す。

はじめてという、特別な朝を。

はじめましてのごあいさつ

ひらひら揺れるスカートが好き。

パンケーキとパフェはとりあえず写真を撮る。

ピンクとブルーなら、ピンクを選ぶ。

アイラインは目尻を少し長くして、最後の悪あがき。

そんなフツーのOLがつづる、とるにたらない話です。